Recette

News

路地裏の風景

大阪の空堀商店街のほど近く、ひっそりと佇む一軒の長屋があります。

細い路地に面して肩を寄せ合うように建つ木造の家々。
かつて大阪の下町には当たり前のようにあった風景ですが、近年はマンション開発や道路拡幅、防災上の課題などを背景に、こうした路地のある街並みは少しずつ姿を消しているように思います。

けれど、この空気感には不思議な懐かしさがあります。

同じく大阪の下町で育ったボクにとっては、どこか見慣れた景色であり、幼い頃の記憶をふと呼び起こすような、そんなノスタルジアを感じる場所です。

KODAK Digital Still Camera

今回、この長屋の一画をリノベーションします。お施主さんのご実家です。

子どもの頃、毎日の暮らしを過ごした家。

結婚後には、ご自身のお子さんとともに暮らした時期もありました。そして阪神大震災の記憶。

長い年月のなかで積み重なった、家族の時間。ただ古い建物なのではなく、「思い出そのもの」がこの場所には残っています。

こうした長屋は、実は簡単に建て替えることができません。お隣と構造的につながっているという問題もありますが、それ以前に、前面道路の幅員が不足しているため、現在の法規では確認申請そのものが難しいケースがほとんどです。

だから「リノベーションして住み継ぐしかない」そう思っていたのですが、周囲を見渡して驚きました。

二軒に一軒ほどの勢いで民泊へと姿を変えていたのです。これまでならなかなか売れないはずが、不動産会社が買い取ったのでしょう。海外からの旅行者が大きなキャリーケースを引きながら路地を歩く光景は、少し前のこの街では想像もできなかったかもしれません。

インバウンド景気、地域経済の活性化、そんなふうに見ると「民泊にして何が悪い」と言われそうですが、この昭和感あふれる、以前のコミュニティの佇まいが残るこの場所に、何の縁もゆかりもない人が、ほんの短期間で入れ代わり立ち代わり出入りするというのは、なんだか異様な感じです。

« 一覧に戻る »