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現場review|囲炉裏と火棚

奈良県宇陀市の古民家改修で、囲炉裏と火棚を造作。
当時は囲炉裏にあまり馴染みがなく、どのような構造で、どんな材料からできているのかも、ほとんどわからなかった。そこで、囲炉裏のある料理店へ足を運んでは、食事もそっちのけで框の高さや組み方、火棚との位置関係を眺めていた。
造作家具の計画は、まずお客さまのイメージや要望を聞くところから始まる。
どのように使いたいのか。
何人で囲むのか。
どんな姿勢で過ごしたいのか。
打ち合わせで一つずつ確認し、3Dパースを使いながら完成後の姿を共有していく。

打ち合わせを3〜4回ほど重ねると、少しずつ形が見えてくる。方向性が固まったところで、今度は造作図の作成へ。


今回の大きなポイントは、あぐらをかいたときに、框の下へ足を入れられる空間を確保すること。ただし、足入れを広くすれば、それで使いやすくなるわけではない。框が高すぎると、料理や器を置いたときに手を伸ばしにくい。反対に低すぎると、食事のたびに前かがみになり、身体へ負担がかかる。図面の数字だけを眺めていても、ちょうどよい高さは見えてこない。
そんなときは、実際に床へ座る。あぐらをかき、スケールを当てながら、手の位置や姿勢を一つずつ確かめる。ほんの数センチの違いでも、身体が感じる使いやすさは変わってくる。
素材についても、同じように検討を重ねた。どの樹種なら古民家の空間に馴染むのか。塗装によって周囲の色へ寄せるのか。それとも、木がもともと持つ色や表情を生かすのか。形だけでなく、空間全体のなかでどのように見えるかを考えながら、図面へ落とし込んでいく。
造作家具の図面には、平面図、正面図、側面図、断面図など、いくつもの視点が必要となる。一か所の寸法や形を変更すれば、それに関係するすべての図面を修正しなければならない。少し時間がかかる作業ではある。けれど、図面は単に形を示すためのものではない。お客さまの希望と設計の意図を、実際につくる職人へ正確に手渡すための共通言語でもある。
使う人の姿勢を想像し、素材を選び、納まりを考える。そうした細かな検討と調整を積み重ねながら、一つの造作を現場へつないでいった。
