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リノベは図面の外にある

リフォームやリノベーションは、新築よりも手軽で、簡単な工事だと思われがち。けれど、実際に現場へ向き合う立場から見ると、むしろ新築以上の難しさがある。

現場では、「新築しか経験していない職人には難しい」といわれることもある。何もないところからつくる新築は、あらかじめ検討した図面をもとに工事を進めていくのが基本。

一方のリノベーションは、図面どおりに進まないことを前提に考えなければならない。そこには、すでに建物があるから。

 

 

長い年月を経た建物が、完全な水平や垂直を保っていることは、ほとんどない。床がわずかに傾いていたり、壁がねじれていたりする。一方をきれいに合わせると、別の場所にずれが生じることもある。そうした微妙な誤差を読み取り、一つずつ調整しながら、図面の意図を形にしていく。

それが、リノベーションの現場。

職人たちは、観察力と経験、そして確かな技術によって、その難しさを自然に吸収していく。もちろん、現場だけでは判断できないこともある。そんなときは設計者も現場へ向かい、職人と一緒に納まりを考える。 

 

既存建物の状態を、工事前にすべて把握できれば理想的。けれど実際には、解体して初めてわかることも少なくない。

想定していた以上に傷みが進んでいる。

見えなかった場所に、補強が必要となる。

予定していた位置に、配管や梁が通っている。

その都度、施工方法や使用する材料を見直し、ときには仕上げ材まで変更する。現場の状況に合わせたアレンジやアドリブが、施工にも設計にも求められる。

工程管理にも、新築とは異なる難しさがある。新築では、3〜4か月ほどの工期をかけることも多く、小さな変更であれば、全体の工程のなかで調整できる場合がある。

一方、リノベーションの工期は1か月半ほど。工事の内容によっては、3週間程度ということもある。工期が短いからこそ、わずか1日、2日の遅れが、全体へ大きく影響する。しかも、限られた日程のなかで、多くの職人が順番に現場へ入る。一つの工程が遅れたり、急な変更が生じたりすると、そのあとの工事も連鎖的に動かなくなる。短い工期のなかで複数の仕事をつなぐ、緻密な工程管理が欠かせない。 

 

見積もりにも、同じようなことがいえる。新築では、構造や基礎、外壁、屋根といった建物全体を構成する工事の割合が大きい。内装や設備の仕様を変更しても、工事費全体への影響は比較的限られる場合がある。

一方、リノベーションは、内装や設備の工事が中心となる。この部分を施工するのか、残すのか。設備のグレードをどこまで上げるのか。一つひとつの選択が、工事費全体へ直接影響する。

住まい手にとっても、構造や基礎より、毎日目にする内装や設備のほうが変化を実感しやすい。そのため、仕様を少し変えただけでも、見積もりが大きく動いたように感じられることがある。小規模なリノベーションほど、その傾向は強くなる。

新築では、大工が数か月にわたって現場へ入るため、工事の流れのなかで「ついでにやっておきましょう」と対応できることもある。しかしリノベーションでは、それぞれの職人が限られた時間だけ現場へ入る。小さな作業であっても、そのためにあらためて人と日程を確保しなければならない。その費用も、見積もりへ反映されることになる。 

 

設計にもまた、新築とは違う難しさがある。デザインや機能性を考えるだけでは足りない。

現場で本当に施工できるのか。

既存の建物と無理なくつながるのか。

最後に美しく納まるのか。

設計の段階から、そうしたことを何度も検討する必要がある。図面は、完成形を示して終わるものではない。

既存の建物を見る。

図面を描く。

職人と相談する。

現場でわかったことを受けて、また図面を見直す。設計と現場のあいだを何度も行き来しながら、一つの住まいをつくり上げていく。 

 

 

だからこそ、問題に出会ったとき、すぐに「できない」「わからない」で終わってしまう職人とは、一緒に仕事を進めることが難しい。

どうすれば実現できるのか。

別の方法なら、よりよく納まるのではないか。

何が問題で、どのような空間を目指しているのか。

それらを共有し、同じ方向を向かなければ、短い期間のなかで複雑なプロジェクトを進めることはできない。多くのリフォーム・リノベーション会社が、こうした難しさと日々向き合っている。私たちもまた、一つひとつの現場から学び続ける。

既存の建物を読み解く力。

その場で判断する力。

意図を正確に伝え、異なる技術をつなぐ力。

よりよい住まいをつくるために、これからも知識と技術を磨いていきたい。

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